航空機用ディーゼルエンジン???
 欧州の地域では、今、ディーゼルエンジンが旬です。 ユーロ4とかの色々な基準の数字をクリアするためもあるでしょうが、とにかくすごいバリエーションです。軽油=安い=経済的というイメージしかありませんでしたが、ガソリンエンジンに優るとも劣らない絶対的パワーやマルチシリンダー化、日本もそろそろ何か考えないといけないのでは...? でも、現実、日本は逆方向やからなぁ。
 そんな背景の中、タイトルの記事をルフトハンザ航空の機内誌の記事で見つけました。 数ある機内誌の中でも、、特に、このルフトハンザの機内誌の航空技術関連記事は、結構マニアックな内容となっており、搭乗の際には、非常に楽しみにしています。 航空機の技術情報系はもちろん、新型機体、欧州の複雑な航空管制システム、空港の設備など、相当なレベルで紹介されています。で、今回、それをここで紹介してみようという気になったわけです。
 たまたま、この時のメインの記事が、セントレア空港に定期便を飛ばすことが決まったルフトハンザなので愛知万博の特集でした。
Diesels Himmelfahrt   --- ディーゼルが宙を舞う!
  
有鉛で高オクタンの航空燃料(Avgas)を使わずに飛行する事が、現実になりつつある。航空用ディーゼルエンジンが実用化されたからで、商用の航空機にも搭載されるのは時間の問題である。

  エンジンの始動キーを、最初のクリックまで回す。すると色々な制御ランプが点灯する。
視線をちらちら点滅するグロープラグインディケーターにしばし置き、その点滅が消えた時に、プラグが十分な温度になったと認識する。そして、キーをエンジンスタートの位置まで回す。 この始動手順は、自動車ではなく、あくまでも、ダイアモンド DA40 TDI(小型飛行機名)のものである。
 
 コックピットには少し緊張が走る。振動は? マフラーから煙はでないの? このエンジンからは、そんな事が発生するわけもなかった。 135馬力のセンチュリオン 1.7エンジンは、the Saxon manufacturer Thielert Aircraft Engines (TAE)によってこの世に誕生した。ターボチャージャー特有の低い笛の様な音が、柔らかくうなる程度にしか聞こえない静かなモノであるために、多くのパイロット達にとっては、エンジン音の革命ともいえるべきものである。
   実際、会社の長である、フランク・ティエレルト氏は、小型機の分野では、革命という以外言葉は見つからないと明言する。このエンジンの開発当初の目的は、技術的に置き去りにされた、プロペラ駆動のセスナ機などのガソリンエンジンの燃料消費の悪さを解消したいというモノであった。そして、現在的な、ターボチャージャー付きで、電子制御で、軽油が使え、且つ、Standard Kerosene(通常灯油と訳すべきか、あるいは、航空燃料と訳すべきか不明)とが使用可能なディーゼルエンジンを紹介できる様になったのである。
   彼は、年間、約10,000機のこの航空機用ディーゼルエンジンを世界に向けて販売し、約300機にこのディーゼルエンジンを取り付ける事になった。ほとんどの顧客は、取り付け後の結果に満足している。ただ、このプロジェクトを開始したときの最大の課題は、ディーゼルエンジンに対する偏見とどう戦うかということであった。 ディーゼルエンジンが出す、排煙、振動、悪臭...。それは、長い間、そのままで放置され、それが、トラックや、或いは、船舶用エンジンとして、船底の奥底に隠さねばならない様なモノというイメージが作られてしまったのだろう。
 フランク・ティエレルト氏(TAE社社長)とその航空機用ディーゼルエンジン(センチュリオン 1.7)。
 このディーゼルエンジンが搭載された2/4座軽飛行機。 フランス製 Robin135 (上)、オーストリア製ダイアモンド DA40(下)
ムールバウアープロペラ付 センチュリオン4.0は、信用性、高効率燃料消費、簡単なメンテ、長距離対応のディーゼルエンジン
しかしながら、現在、自動車業界で、最も魅力のある贅沢なエンジンは、ディーゼルエンジンであり、技術者や製造メーカーは、ディーゼルエンジンの開発に心血を注いでいる。 また、航空機用のエンジンは、飛行時間が、1,600から2,000時間に達した時に、オーバーホールを行うか、新品に交換する義務が課せられている。その時期が来たときには、必ず、オーナーは、そのままガソリンエンジンを維持するかディーゼルエンジンに交換するかを選択せねばならない。
   ところが、今までは、このエンジンの対象となりうる4座のセスナ172、パイパー PA28、ダイヤモンド DA-40とDA-42の小型機で選ばれるエンジンに選択の余地はなかった。 そして、今、パイロットが今まで使っていたアメリカ製のエンジンよりも50%も燃料を節約でき(結局、ピストンエンジンは約40リットルの有鉛の航空燃料/avgaLL100を1時間のフライトで消費し、価格は1リットル1.70ユーロである)絶対的な信頼性、加えて、重量と機能、価格、操縦性、メンテ時間、コストも低いエンジンがあるとなると、パイロットが興味を持っても不思議はないわけである。
  フル電子制御のエンジンとプロペラ制御システムは、パイロットに操縦の革新ももたらした。従来、3つのレバーで操縦を行っていたのが、1つに集約された。 但し、緊急事態に関する機能は、2重に組まれている。 例えば、発電機の電気部品への電気の供給が止まったとすると、バッテリーが即刻それをカバーし、30分は飛行を続ける事が可能となり、その間に適切な着陸場所を探す事ができる。そして、50,000時間以上の飛行時間を記録したとしても、センチュリオン1.7には全く問題がないことである。このエンジンのメンテ間隔は既に広げられており、それによって、メンテや修理のコストの負担が軽くなっている。加えて、、このエンジンは、新記録を去年の夏に記録している。テストパイロットのゲラルド・グイルラウマウド氏が、エンジン2機を搭載したダイアモンドトゥインスターでニューファウンドランドからポルトガルまでを無着陸で飛行した。このディーゼルエンジンを搭載した小型機での最初の大西洋横断となった。もちろん、飛行中の他機からの援助などは一切受けていない。
  このエンジンのベースは、なんと大量生産の自動車のエンジンにある。センチュリオンのプロトタイプエンジンは、メルツェデスAクラスのディーゼルエンジンから生まれている。しかし、航空機と自動車用のエンジンでは、共通の燃焼原理以外には、少し似たところがある程度である。 
   フライトスクールやアマチュア飛行クラブの小型の飛行機を所有する者たちには非常に魅力的なエンジンでもあった。センチュリオン1.7の兄弟分である、8気筒のセンチュリオン4.0は既に完成されている。社長のティエレルト氏は、このエンジンを6座〜8座で、エンジン1機或いは2機の商用機に供給したいと考えている。 つまり、飛行時間当たりのピストンエンジンの維持費は莫大なモノなのである。
  メーカーとしての次なる目標は、アメリカ市場にこのディーゼルエンジンの良さを理解してもらうことにある。長距離飛行での経済性とメンテの容易さはきっとアメリカのパイロット達にも理解されることだと思われる。
  「アメリカでは、航空燃料は明らかに安価だが、このエンジンの特徴と信頼性はきっとパイロット達に理解してもらえる」とティエレルト氏は主張し、また、「加えて、我々が確信を持っているからこそ、アメリカ市場に参入する自信があるからだ」


以上
 65,000...
  冬期の1日分のすべてのルフトハンザ機のフライト運行を維持するには、65,000リッターのデ・アイサーが必要とされる。 約1,000リッターのデ・アイサーが、通常、1機のボーイング747ー400型の機体につく氷と雪を取り除くのに必要とされている。このデ・アイサーは、ポリプロピレングリコールか食用グリコールと水を混ぜたモノで、自然還元可能な環境を配慮したモノを使っている。この液体を+80度に加熱し、それを機体にスプレーし、機体についた雪と氷を取り去るのである。
 この記事も掲載されていました。 日本も寒い地方では必ずやっていると思いますが、離陸前に機体がシャワーを浴びる儀式。これで、結構飛行機の出発が遅れることがあります。特に冬期の欧州。また、一度浴びたのに、離陸許可が長い時間降りずに、もう一回このシャワーを浴びた事も。こうなると、1時間遅れは仕方ないところです。
 なぜ浴びるかというのは、駐機中についた雪と氷を取り差るのが目的です。なぜ、雪と氷がついたままでいけないのかというと、各動作部機能が悪くなるのもあるでしょうが、最も重要な事は、氷と雪がつくと、揚力をつくる翼の形が変わってしまい、離陸機能が著しくダウンするからだそうです。 でも、冬場はしょうがないですね。
 デ・アイサーといい、まぁ不凍液みたいなものと理解していいのかな?




以上
    
    ルフトハンザ航空の機内誌のMagazin 02/2005版からの抜粋でした。
自動車のディーゼルエンジン率
  ちなみに手元の雑誌で、欧州の主な国の2004年の自動車の新車に占めるディーゼルエンジン率は、
   UK (GB) : 32.3%  ドイツ(D) : 43.7%   フランス(F) : 69,.1%  イタリア(I) : 58.4% スペイン(E) :65.0%

  EUの平均は、52.0%との事。
  BOSCH社のレポートでありました。 まだまだ課題もある様ですし、ハイブリッド車などにはやはり対抗できないでしょうが、現時点では、欧州は、ディーゼル化がトエンディな様です。 
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